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『ひとつ質問しても…って、聞いてんのかオイ』
少女の姿をしたアバターは、不機嫌そうに喋っていた。
さっきのが勤勉な蟻の姫なら、こちらは凶悪享楽な捕食者。
蜘蛛の女王……それすらも従える、支配者…だろうか。
『聞いてんのかっつってんだ!!』
「あ、ああ…」
大音量フルボリュームで叫ばれ、耳が痛くなる。
フン、と彼女は鼻をならし、
『なんでワタシを選んだ?』
シンプルに。
その答えは、簡単だ。
「押すとこ間違えたんだよ。最近機種変したばっかなんだ」
『正直だなおまえ…』
あっけにとられた彼女は、なにも喋らない。
「プログラムって言ってたけど…意外と人間くさいんだな」
『……それがワタシの欠陥(バグ)なんだよ。あれと違って、嘘だってつけるさ』
どこか憂鬱に。
あれ、というのは、ハノンと名乗ったほうなのだろう。
人間くさいのが欠陥というのは納得いかないが、それは今は関係ない。
『決めたのか?』
「最初から、決まってる」
自分でおどろくくらいに、すっきりとした声が出た。
「協力、してくれるんだろ?」
そう言ってから、少し間をおき、
「しないと言っても、してもらう」
それを聞いた蜘蛛の支配者は、凶悪に顔を歪め、笑う。
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