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『ここにはな、この町の犯罪者と被害者が集められている』
楽しそうに、声は言う。
『〈町が平和であるために〉。痴漢、万引き犯、殺人犯、銀行強盗、詐欺師…集められて、君風に言うならば、死んでいるのとかわらない生を生きているのさ』
楽しそうに。
舌なめずりをするかのような、背筋の凍るようななにかを含んだ声が、
『集められて、どうなると思う?』
答えを間違えたら、この捕食者に喰われる。
そんな錯覚に襲われ、少年は思わず身震いをする。
相手は実体のないプログラム………で、あるはずなのに。足元はおろか、全身をねばついた糸に絡めとられて。あげく、見た目から味を見定められているかのような、そんな感覚に陥る。
声だけで、だ。
どんな表情をしているのかはわからないが、自ら進んで見てみたいとは思わない。
答えろよ、と威圧するように、感じる。
考えようとする思考の奥底で、嫌な感触が蠢く。
苦く重たい恐怖。
そこから逃れようとする自分が、制御できない。
『どうした少年。呼吸と動悸が速いぞ?』
じっとりと舐めるような、甘い声。
なのに、喰われる寸前のような、命の危機を感じる緊張感。
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