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「逃げ出そうとは思わないのか…?」
この問いかけは、逃げだ。
わかっていても、打つ手がない。
『………まぁ、逃げるべきではあるんだろうが』
「?」
どこか切ない声に、足が止まる。
少年が足を止めたことに、マノンも気づいていた。
最近の進歩した携帯端末の、健康管理機能から、少年の状態が手を取るようにわかる。
(失敗したかねこれは)
どこか歪んだ笑いを浮かべ、そう思う。
ハノン以外のモノに、マノンとしての自分のまま喋るのは久しぶりで―――――つい、はしゃいだせいで、抑えが効かなくなった。
つい、素の感情のまま声を出してしまった。
(だーもー!!もうちょいからかって遊ぶつもりだったっつーのに…ね)
彼女に、少年に協力する気は気まぐれ程度にしかない。
ないよりはマシ。だが、ただの遊び。
毎日をただただ繰り返す中の、ほんの少しの退屈しのぎ。
ことの真相は気になるが、そんなものは、自分一人でも調べられる。
そう、密かに笑っていた。
「君は、逃げるべきと考えているんだろう?」
『あ、ああ…』
かすれた少年の声に、笑みを深める。
「なら、足を止めている暇はないぞ?」
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