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「マノちゃーん、代わってよー」
平淡かつ感情の欠片もない波が寄せてくる。
「ルールを作ったのはてめぇだろうが。今は、ワタシの好きにさせてもらう」
そう返すと、あっさりと彼女は引いていった。
ルールは○つ。
ひとつは、片方が選ばれたときには、もう片方は干渉しないこと。
もうひとつは、最低でも少年が施設を脱出するまでは、少年に協力すること。
(まぁ、つまり。脱出した後に、敵になることもできるわけだ)
今は、からかいこそしても、少年の敵ではない。
もっとも。からかいすぎて、相手が疑心暗鬼になったとしても、それはルール違反にならないので、気にせずにからかう。
ハノンは本当に冤罪を晴らしてやるつもりらしいが、マノンはそこまでする気はない。
犯人はおろか、そもそも起きたのかどうかすらわからない事件、というモノに、引かれるものがないわけではない。が、あいにくと、ミステリーはマノンの好みではない。
探偵と共にミステリーを解いてゆくよりも、探偵がミステリーに苦悩するさまを、悠々と見物するほうがよほど楽しい。
(せいぜい、安全に無駄な遠回りをしてもらおうか)
ふと面白いことを思い付き、施設の地図を探しだす。
思っていたよりも、あっさりと地図(データ)は見つかった。
1枚2枚、なんてものではない。
(…!?まずっ…)
何千。何万。何億。
たったひとつの施設のデータが、読み込もうともしていないのに、大河の奔流のごとくマノンに襲いかかる。
まるで、土足で家にあがりこんだ盗人を、過剰に攻撃するかのように。
どれがダミーか。どれが本物か。
取捨選択する間もなく、情報の大河に溺れてゆく……!!
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