第1章 Error Cord・criminal

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「マノちゃーん、代わってよー」 平淡かつ感情の欠片もない波が寄せてくる。 「ルールを作ったのはてめぇだろうが。今は、ワタシの好きにさせてもらう」 そう返すと、あっさりと彼女は引いていった。 ルールは○つ。 ひとつは、片方が選ばれたときには、もう片方は干渉しないこと。 もうひとつは、最低でも少年が施設を脱出するまでは、少年に協力すること。 (まぁ、つまり。脱出した後に、敵になることもできるわけだ) 今は、からかいこそしても、少年の敵ではない。 もっとも。からかいすぎて、相手が疑心暗鬼になったとしても、それはルール違反にならないので、気にせずにからかう。 ハノンは本当に冤罪を晴らしてやるつもりらしいが、マノンはそこまでする気はない。 犯人はおろか、そもそも起きたのかどうかすらわからない事件、というモノに、引かれるものがないわけではない。が、あいにくと、ミステリーはマノンの好みではない。 探偵と共にミステリーを解いてゆくよりも、探偵がミステリーに苦悩するさまを、悠々と見物するほうがよほど楽しい。 (せいぜい、安全に無駄な遠回りをしてもらおうか) ふと面白いことを思い付き、施設の地図を探しだす。 思っていたよりも、あっさりと地図(データ)は見つかった。 1枚2枚、なんてものではない。 (…!?まずっ…) 何千。何万。何億。 たったひとつの施設のデータが、読み込もうともしていないのに、大河の奔流のごとくマノンに襲いかかる。 まるで、土足で家にあがりこんだ盗人を、過剰に攻撃するかのように。 どれがダミーか。どれが本物か。 取捨選択する間もなく、情報の大河に溺れてゆく……!!
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