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「マノン?」
足を止めていた少年は、ポケットに入れていた携帯端末を手にとる。
ブラックアウトした画面のどこをつついても、変化する様子はない。
不安。
『…ジジ…ザザ…』
スピーカーから漏れる雑音に、余計に不安を煽られる。
が、
『……生身だったら…息切れでもしてるんだろうな…』
疲労の色濃く滲み出た声が、かすれながらも聞こえる。
つくづく。機械らしくない。生身の人間と喋っているような、そんな気がしてきてしまう。
「大丈夫なのか?それは」
ほっとしつつ、まだ戻らない黒い画面に話しかけると、
『ん?…オイオイ。ワタシは嘘をつけるんだが?これが演技だとは考えないのかよ』
口調も言葉も辛辣だが、声に滲み出た疲労は隠せていない。
なにより、かすれて聞こえた一言が、嘘だとは思えない。
『まあ、外は大変なことになってるかもな』
はっきりと聞こえた声に、ギョッとする。
『なんだぁ?そのマヌケ顔』
「…なんで表情とかわかんだよ」
『内カメラ。マヌケなのは否定しないんだな』
バヂッという音がして、画面に数々の平面図が映し出される。
地図。
どこの、かは、いうまでもない。
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