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そう言って、一方的に電話を切るかのごとく彼女は消えた。
たしかに言っていたとおり、見慣れないアプリが表示されている。
蟻に運ばれる人骨を模したデザインをしているあたり、かなり悪趣味だ。
「……あたってみるしかないか」
その前に、残っていたハノンのアプリに触れる。
『はいは~い。ようやくのお呼びですねー』
ふてくされた口調ながら、棒読み。
全体のシルエットは蟻のようなアバター。
ハノン。
『マノちゃんがなにか粗相をしたり、しませんでしたでしょうかー』
「あ、ああ…むしろ地図を出してもらったり助かったけど」
機械らしく。自然なまでに不自然なそのしゃべりかたに、ぎこちなくかえす。
例えるならば、素人の演劇を見ているような、だろうか。
『地図に悪意は…あ、よかった~。大丈夫そう……資料室ですね?』
「え!?あ、うん。場所が…」
『大丈夫です。ここから、階段に出るまで歩いてください』
返事を待たずに、ハノンはどんどん話を進めてしまう。
『でも、初めてですねーチャット以外で、ハノンとして他人とお喋りなんて』
歩く合間に。そんなことをハノンは言った。
「ハノンとして?」
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