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『はい』
すっきりとしたよく通る声で彼女は言い、
『マノちゃんもですけどねー。普段、町の外の人に、町の中の誰かとしてお返事を返すことは多いですが』
なんでもないことのように言われたせいで、つい、聞き流しそうになる。
「町の中の誰かとして…?」
町の中の人として、ではなく。町の中の誰かとして。
なんとなく、引っ掛かってしまった。
『ええ。例えば、町の外のAさんから、Bさんに電話がかかってきたとします。そういったときに、BさんとしてAさんに応対するわけです』
マノちゃんはその逆ですね。と。
言った声を、少年は聞いていなかった。
情報管理プログラム。
思い浮かんだのは、パソコンなどネットの補助程度。
だったのに、少年の想像力の外。もっともっとスケールの飛んだ話で、
「なんで…そんなこと…」
喉の奥から絞り出すように、かすれた声。
『え、当たり前じゃないですか』
さも当然というように、彼女は電子の声を紡ぐ。
『大事な大事な実験中なんですよ?町の外の人に入りこまれたら、結果がきちんと出ないかもしれないじゃないですか…あれ?なんでまた、立ち止まっているんですか?』
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