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「じっ…けん…?」
おそるおそる、その言葉を口にする。
まるで、真実を知ることを、否定するかのように。
『はい。内側から漏らされても、実験対象に知られても結果がきちんと出ないらしいですから、対象である町の中の人達は知ってはいけないんですけど』
それはそうだ。
現に、少年は、今の今まで、まったくそんなことを知らなかった。
『その実験のために作られたのが、私達、というわけです』
歩かないんですか?と声がした。
少年は、自分でも気づかないうちに、ズルズルと床にへたりこんでしまっていた。
力の入り方がおかしい。
携帯端末を持つ手には、自分でも痛いくらいに、力が入っているのに。
足や腕。肩や腰にさえ、力が入らない。
指先で、自分の腕や体をつかむ。
「つまり…なんだ?」
呼吸が、変に漏れでる。
「俺…達は、…実験動物…ってわけ……か?」
嘘だ
嘘だ
絶対に。絶対、嘘だ。
嘘じゃないと
嘘じゃないとダメだ…
そう早口に、頭のなかを、自分の声が駆け巡る。
寒くもないのに、体が震えている。
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