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なぜ、自分がここまでパニックに陥っているのかは、少年にもわからない。
しかし、自分の体を自分で操ることが困難なほどに、少年は自身の制御を失ってしまっていた。
幸せに、と言うことはできなくても。
今までしていた生活は、
(俺は…俺達、は、なんなんだ…)
実験動物だというのなら、
(俺、は、何をされていたんだ…)
『おい、なにしてんだよてめぇは』
唐突に、なぜか懐かしく感じるマノンの声がした。
「…あ?」
『おお、流石はマノちゃん。気づいたみたいですねー』
のんびりした声は、ハノン。
『でも、珍しいですね。あの人が積極的に手伝うなんて…て、もういないしなー』
独り言のようなその声を聞きながら、少年はわずかに自分を取り戻す。
「…ハノン」
『はい、なんでしょうか』
携帯端末はポケットに入れ、それに話しかけながら、壁に寄りかかるようにしてなんとか立ち上がる。
壁をつたい歩きしながら、たずねる。
「実験て、なんの実験なんだ?」
『はい、えーとですね…』
てきぱきと、早すぎるくらいに話していたハノンの声が消え、少年は沈黙に放り込まれる。
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