第2章 I believed in……

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『資料室に、向かってください』 しばらくして聞こえた声は、どこか切羽つまっているようで、 『早く、向かってください』 有無を言わせない急かした声は、どこか今まで以上に人間味がない。 しかし、どちらにせよ行くはずだった場所。 不審に思いながらも、少年は進む。 途中、歩く足音に身を潜め、警戒して進む。 なぜ、ハノンは切羽つまっているのか。 なぜ、実験の話を自分にしたのか。 また、パニックを繰り返さないよう、水面の泡のように湧き出る疑問は、全て無視する。 景色が変わることもなく、時間を計る術もなく、どれほど歩いていたのかはわからない。 長い時間だったのか。 それとも、それほど時間は経っていないのか。 資料室にたどり着く。 たどり着いた。 鍵は、かかっていなかった。 中には、簡単に入れた。 そっと、扉を閉めた。 「ついたぞ」 そこは、資料室というよりは、誰かの私室のように思えた。 あるいは、ホラーの舞台にでもなりそうな、時間の止まった部屋。 スチール製の机と、同じくスチール製で、ぎっしりとファイルやノートのつまった埃だらけの本棚。机の上の、型の古いノートパソコンと、カビのはえたマグカップ。アルミフレームのベッドの布団も黄ばんだカーテンも、殆ど原形を留めないほどにボロボロ。 シンプルな。飾り気のない、必要最小限のものしか置かれていない部屋。
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