1人が本棚に入れています
本棚に追加
『こんな場所にたどり着いたのも、なにかの縁だ。ちょっとしたゲームをしようじゃないか』
映る文字は、計算式やらアルファベットやら。
読み解けない文字の数々が、マノンの手の上に収縮し、鍵束の形に収まる。
その鍵束を、クルクルと指先で回しながら、マノンは口の端を吊り上げ、
『これがなにかわかるな、ハノン…いや、こっちにはてめぇは干渉できねぇんだったな』
画面の中でほうりなげられる鍵に、ご丁寧にもチャリチャリと音がする。
『なぁハノン、知りたいか?お前のデータメモリの中に、一切記されていない、実験の内容を』
少年は、ぐっと拳を握り締める。
『なぁ少年、知りたいか?ここから出る、その方法を』
ハノンは、なにも答えない。
少年には、マノンの考えが読めない。
いや。そもそもが、何を考えているとかではなく、彼女らを使う、何者かに従っている。それだけなのかもしれない。
それでも、その考えが、読めない。
「知りたいに、決まってんだろ!!」
でも、無視はしない。
相手の考えが読めなくても、なにかこちらが不利になる意図があるのかもしれなくても、飛び付く。
だが、
『同意、しかねますねー』
最初のコメントを投稿しよう!