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焦げ臭い臭いと、
「走れ少年!!」
腕を放したもう片方が、文字どおり崩れ落ちるのを合図にするかのように、少年は走る。
ガシャガシャと、耳障りな音をたてて崩れた[なにか]へは、振り返らない。
マノンの声を発した、仲間に武器を突きつけた片方にも。
「くそっ…」
しかし、走っても。
道行く先に、またそれが現れた。
どうすれば、切り抜けられるのか。
今度は、本当にどうしようもない。
拳を叩きつける。走り抜けて逃げる。足を引っ掻けて転ばせる。武器を奪って反撃する。
考えて、選びとり、実行する。
その、一瞬の隙が、まさしく命とり。
(…………………)
死んだ、と。
ゴウ…と風を鳴らして降り下ろされた棒状の武器に、首を捉えられたとき。そう、少年は感じた。
覚悟して、目を閉じたその刹那。
意識があったのかどうかは、定かではない。
ただ。
その瞬きの間に、夢を見た。
まだ、死んでねーよ
そう、口が動いた、蜘蛛のようなアバター。
「逃げるんだろ、ここから」
「………ああ!当たり前だ!!」
痛み。
強烈で、うれしいくらいに、生存を確認させてくれる感覚。
しっかりと、床を踏みしめる。
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