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町の中から外に向けられる情報を、一切絶つ。それがマノンの仕事。
与えられた、役割。
生まれた理由。
ハノンの仕事は、町の外からの情報を、一切絶つこと。
二人の役割は、情報を町の住民に都合よく改変して流すこと。
ただ、そのためだけに、産み出された。
ハノンは、自分に対して疑問をもったことはない。
[そう]あるのが当たり前。
自分は、[そう]作られているのだから、疑問をもつ必要はない。
機械(プログラム)としては、ひどく妥当とも言える。
しかし、と。
木霊のように、外へ情報を返すためにつけられた、学習機能で考える。
人間ならば、どうするだろう、と。
そして、たどりつく。
従順に従うだけの道具だとバカにされたのならば、そうではない1面を見せればいいのでは、と。
情報処理能力の余剰スペースを圧迫しない程度に、膨大な0と1が積み上がる。
町の中で起きる事件は、万引きから殺人事件まで。小さかろうが大きかろうが、けして報道されることはない。
そもそも、報道機関が入ってこれないのだから、当然だろう。
しかし。
ハノンは、自らの権限を活用し、様々な映像や情報を集めてゆく。
出来上がったのは、ごく当たり前のニュース番組。
ただし、
起きてもいない事件の。
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