【死を運ぶメール】

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今日は、高校の終業式だった。 明日からは、待ちに待った夏休み。 放課後の教室の中には、いつもにもまして、解放感とざわめきにあふれていた。 帰りの寄り道の相談や、長い休みの計画を、楽しげに語り合うクラスメイトたち。 昨年までは私も、長い夏休みの到来を、無邪気に喜ぶあの輪の中にいた。 でも、今の私には、昨年とは決定的に違うモノがあった。 あの時傍らにいた、あの二人が居ない―― 「夏休みって言えば、前に、海の事故でここの女生徒、死んでんだよね……」 背中越し、 不意に耳に飛び込んできた会話に、鞄に荷物を詰め込んでいた私の手が止まる。 「あー、知ってる。友達三人で泳ぎに行って、離岸流、だっけ? 波にさらわれて溺れたってやつでしょ」 「えー、なになに、何の話?」 私が、その当事者で、唯一の生き残りだと、彼女たちは知らないのだろう。 好奇心と言う名の花を咲かせる彼女たちにとっては、それは、対岸の火事でただの話のネタでしかない。 私は、それ以上聞きたくなくて、淡々と荷物を鞄に詰め込むと、静かに席を立った。
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