第1章

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 人間は人間以外に自分の心の隙間を埋めるモノを生み出した。  それはゲームであったり本であったり……まぁ、何でも良いがとにかく進歩した技術は、俺たち人間から人間の有り難みを、隣人の尊さを奪っていった。  独りになることを苦にしなくなった末に、人間は弱者であることを忘れ、集団行動をあたかも必要のないことだと勘違いし、結果自分勝手な人間が我が物顔で往来するようになった。  そんな現代社会において、俺達のような関係はもしかしたら珍しいのかも知れない。  暇があるならば意味もなく集まり、益体のない話で盛り上がり、また明日会おうぜと、言うこともなく誓う。  有り体に言ってしまえば親友。照れ隠しするなら悪友で、謙遜すれば腐れ縁。小学生の頃からの付き合いだ、幼なじみといって良いだろう。  この俺、赤峰良(あかみね りょう)と、青垣零(あおがき れい)、黄島玖(きしま たま)が、どうやって出会ったのかを俺は良く覚えていない。  こんなにも仲が良いのに、覚えてないのはどうも具合が良くない。だから俺は、今日も意味もなく集まった親友たちに、言ったのだ。 「なぁ、俺達っていつ出会ったんだっけ」
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