第1章

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「……この度は、ご愁傷さまです。………久しぶり、上総。」 「史弥……っ、」 母が、死んだ。 シングルマザーで俺を育ててくれた母。父親は知らない。母は何も言わなかったけど、不倫の末に出来た子だと近所のお節介ババアが教えてくれた。 「今日の四十九日は、親父の代わりに俺に法要させてくれないか…?」 「…………ああ。」 玄関に立たせたままだった史弥を、母の位牌が飾ってある奥へと導いた。 後ろに感じる、史弥の存在。 最後に会ってから、どれくらい経ってるのか。………15年ほどか。 中学時代、一度だけ。体の関係をもった相手。 「では、支度をさせてもらうよ。」 着ていた黒い薄い着物を脱ぎ、袈裟の纏う。 一瞬見えた体の線に、昔のあの時のことが思い出される。
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