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「ーーーーっ!上総っ、何を……っ、」
「……………分からない。」
誘われるまま、俺は、後ろから史弥を抱き締めた。
変わらない。昔と。
「…………上総、ダメなんだよ。仕方が無いんだ…….」
「…………分かってる。」
前と状況は、ちっとも変わってない。それでも。
「あの時は、お前の願いを受け入れた………。
なら、今度は俺の願いを受け入れてくれ。」
「上総っ、」
「お前の中に、俺のモノ何一つ残さない。お前の衣装も汚さない。ーーーだから、今だけ。」
抱き締めた腕に、これでもかってくらい力を込める。
「何もかも忘れて、俺だけを見てくれ………っ。」
「ーーーーかず、さ。」
俺の悲痛な叫びが届いたのか。史弥は俺の腕に自分ので包み込むように添えて。
「………今、今だけだ。今だけ………っ、」
小さくそう呟いて。振り向いた史弥は、その手で俺の両目を隠して、唇を重ねてきた。
隠される瞬間、見えたのは、涙で濡らした赤い目だった。
「ーーーーっ、~~~~っ!」
声を出そうとしない、史弥。それでも俺に揺らされる度にビクつく体は抑えられないようで、それがまた俺を煽る。
「史弥…………っ、俺、もう、イキそう………。
史弥は…………っ?」
そっと、史弥のに触れると、そこはもう限界が来ていることが分かる。
「……………っ、……………っ、」
無言で頭を縦に振る史弥に、頑なに声をだそうとしない史弥に、無理やりにしてやりたい感情が生まれるが、これが最後なんだと。自分でぶち壊すことは出来ないと。冷静な自分が、攻撃的な俺を諌める。
「ーーーーー…………史弥っ!」
「ーーーーっ、ァツ………。」
微かに聞こえた、史弥の声。
もう、一生聞くことのない、甘い声。
「……………………………。」
身なりを整えた後、史弥は黙って帰って行った。
俺たちの未来は、決して交わらない。
史弥が、史弥である限り。
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