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「分かってる……。こんな事しても、何か変わるわけじゃない。」
思い詰めたような、史弥の表情。
こんな切羽詰った顔は、初めて見るかも知れない。
「だけど、これからの長い時間。自分は我慢していかなきゃいけないって思ったら………、凄く堪らなくなったんだ。」
史弥が言わんとしてることが、分からない。
それより、俺は、何で史弥に押し倒されてるんだ?
この状況の説明を、誰か理解してるのならして欲しいくらいだ。
「史弥、お前どうし……。」
「ーーーー上総………っ!」
俺の両手首を掴んでる手に、力をギュッと込めて。
俺の言葉に被せるかのように、史弥が俺の名を呼ぶ。
その表情は、先ほどより硬く暗く。何処か辛いのかと思うくらいに、歪んでいる。
「ねえ、上総………っ。最初で最後の我儘なんだ………っ。今だけでいい。どうか、拒絶しないで……。受け止めて欲しいんだ………っ!」
「史弥……、お前、本当にどうしたんだ…………。」
少し、恐怖を感じてしまうほど。今日の史弥は、おかしい。
「…………上総。」
史弥の目が、段々潤んでくる。下唇を歯で噛んで、我慢しているように感じたが、こらえ切れなかった涙が落ちて。ポツリと、俺の頬を濡らす。
「お願いだ……………、上総。
1度だけでいい。俺を抱いてくれ。」
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