六月二十八日

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「……携帯電話」 ぼそ、と女が答える。 「は?携帯?」 青年はジーンズのポケットに突っ込んでいた携帯を取り出す。 折り畳み式の携帯は長年使っているせいで表面にいくつか細かい傷が走っている。 「その携帯電話は【向こう側】にいたときから使ってたものだろ?それがあいつとの縁になったんだよ」 「縁?」 「どんなに離れていようと引き合う強い繋がりのことさ。例え世界が離れようとね」 「……」 青年はやや乱暴に携帯をポケットに戻す。 女は気にも留めず、話を続けた。 「仕事で使うからとそのまま使い続けたのが仇になったねぇ。それに時期も悪かった」 「【あの日】が近かったからか」 「それもあるし、『【こちら側】に来たい』と願うほど思い詰めていたからさ。だからお前に引き寄せられるようにあいつは【こちら側】と繋がったんだ」 「……そうか」 そう一言呟くと、もう興味はないとばかりに青年は女に背を向けた。 女は追いかけない。 代わりにその背に向けて静かに呼びかける。
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