六月二十八日

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ピロン♪ 重苦しい空気を一気に壊すような軽快な音が鳴った。 正体は言わずもがな、青年の携帯の着信音だ。 「このタイミングだと気が抜けるねぇ」 女の呆れた声を無視して青年はメールを確認する。 《送信者:鬼頭 題名:すまん 車掌が足りん。 いますぐ六番線のホームに来い。 》 「悪ぃ、仕事入った。話はまたにしてくれねーか?」 「仕方ないねぇ。この続きはまた今度、どこかゆっくりできる場所でしようかしら」 「それは遠慮する」 「あら、残念」 心底いやそうな顔をする青年に女は愉しそうに微笑む。 それを見て顔を顰めた青年はそのまま歩き出し--しばらくして突然振り返った。
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