六月二十八日

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「後悔はねーよ」 「え?」 唐突な言葉に女はぽかん、と口を開ける。 青年は表情を崩さずに続ける。 「【こっち側】を選んだことに後悔してねーよ。正直言って【向こう側】への未練タラタラだけど、それでもここで生きるって決めたのは自分だからな」 「……」 「まあ、【こっち側】で生きる方法とかをくれたお前にも感謝してなくもねぇ」 「……急にそんなこと言われるなんて、明日は槍でも降るのかしら」 「失礼なやつだな、お前。つか、いまの顔、鏡で見ろよ。すっげー間抜け面してるぜ?」 「あたいにそんな口聞くのはお前だけだよ。……そうだ、仕事前に一粒どうだい?」 女が壺からビー玉のようなものを一つ取り出して言う。 青年は眉をひそめた。 「いらねぇ。つか、人の魂なんて食うかよ」 「滋養強壮にはもってこいだけどねぇ。まぁ、無理強いもしないけど」 「されても食わねぇよ」 嫌悪感を隠さず吐き捨てるように言うと青年はホームから走り去る。 頑張れ~、と手を振るが無視された。 もっとも、元より返事など期待していなかったが。
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