六月二十八日

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「……あ。そういえばいま何時だろ」 もう考えまいと頭を振ればある意味では最初に確認すべき疑問が湧く。 最初のときもそうだったがどうやら鬼事電車と元の地下鉄--つまり現実世界--では時の流れが違うらしい。 大体は電車が再び動き出す時間と比例するようだがネットで調べた限りでは時間のずれはまちまちだ。 それに鬼事電車内では時計の類は止まってしまうからどのくらい時間が経ったのかは体内時計頼り。 あまり正確性を求められるものではない。 そこまで思い至って先ほどとはまた別の冷たいものが背筋に流れる。 数分、数時間のずれならまだいいが二日以上のずれならまずい。 会社を無断欠勤することになるし、下手をすれば捜索願いが出されてしまう。 そうなったら鬼事電車のことをうまく誤魔化せる自信はまったくと言っていいほどない。 慌ててポケットからスマートフォンを取り出して日時を確認する。
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