5人が本棚に入れています
本棚に追加
「……とりあえず、電気つけよう。
なにも見えない」
そう呟き立ち上がる。
手探りで電気の紐を探るが……いっこうに、その手に触れることはなかった。
――……あれ?
なにか、おかしい。
私の家は木造住宅で、電気も紐で引くタイプの少し古めのやつ。
けれどどこにも紐らしきものは無いし、そういえば足元に感じるこの感触はなんだろう。
……絨毯?
なにかを溢したのか、固まってバリバリになっている。
まさか、知らない家?
いやいやそんな筈。
だって私はついさっきまで寝てたわけで。
知らない人の家で寝るなんて、たとえ酔っぱらいだって中々しないと思う、きっと。
でも、じゃあなんで。
「………」
外はまだ暗い。
人の声はおろか、車の音も聞こえない。
この部屋にも、人の気配は無い。
こんな時の一人ほど、不安なことって無いと思う。
先程までは感じなかった心細さに思わず涙腺が緩むが、そこはぐっと堪えた。
私はもう大人なんだ。
こんなことで泣いてどうする。
怖くない、怖くない。
そうだ、今はとにかく電気。
電気をつけないと……!
壁づたいに歩き、スイッチを探してみる。
まるでそれが義務であるかのように必死に。
だがようやく見つけたスイッチを押しても、この部屋に明かりが灯ることはなかった。
何度押しても、カチカチと乾いた音がするだけ。
「なんで……っ!?」
続けて近くにあった扉を開けようとしてみる。
開かない。
押しても引いても、ガチャガチャと音がするだけ。
「なんで……なんでよぉっ……!!」
もう一度電気を押す。
やっぱりつかない。
思わず声が震える。
だって、流石に、怖い。
私、閉じ込められた?
しかもこんな時に停電?
酷すぎる。
なんか、扉開けられるもの探さないと。
ブレーカー、近くにあるかな。
いつまでも暗いままなんて嫌だ。
ここが誰の部屋かだなんてどうでもいい。
今はなにをおいても電気!
かっ、懐中電灯とか、無いかな。
最初のコメントを投稿しよう!