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朝はいつもギリギリだ。起きたらすぐにスーツに着替え、家を飛び出す。当然朝食を摂る時間も新聞を読む暇もない。
だからと言ってそれで済ますわけにも行かない。新社会人となった今、朝食は抜いたとしても、せめて時事問題くらいは頭に入れておかなければならないのだ。
幸い通勤時間は電車と徒歩を合わせて半時間ほどあった。その間にスマホでニュースのまとめサイトを閲覧することができる。音楽を聴きながらだと周りの雑音も気にならず、スムーズに頭に入ってくるから快適だ。
電車は目的の駅に滑り込む。スマホを片手にホームへ下りた俺は、人々の波をものともせず、一路会社へと急ぐ。小さな液晶画面に映し出されるニュースの見出しを次から次へとタップしながら。
大物政治家が路上でキス?そんな見出しに興味を惹かれたとき、メールの着信を知らせる音が鳴った。
いまどきメールなんて誰だ?などと思いながら受信フォルダを開く。
「お前が悪いんだからな」
そんな一文が目に飛び込んできた。
は?
なんだ?
相手のアドレスは見知らぬものだった。
それでもメールの内容が気になり、思わず「何が?」と返信する。
するとすぐに新しいメールが届いた。。
「お前が悪いんだ。前も見ないで、耳栓までして……」
前も……見ないで?
と思いながら小さな画面から視線を上げた俺は思わず足を止めた。
目の前に男がいたからだ。
男の衣服は真っ赤に染まっていた。
呆けた顔で男は口をパクパクと動かす。
何を言っているのかと思いイヤホンをはずした瞬間、耳を劈くばかりの悲鳴が俺の鼓膜を揺さぶった。
え?何?
と思うのも束の間、男は右手を一振りした。
男の衣服が、さらに赤く染まった。
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