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翌日の朝、河田から電話があった。
「今朝のNHKのニュース見たか?」
わたしは、
「ニュース? 見てないよ。今起きたところだから」
とパジャマ姿のままで答えた。
「新聞は? 朝刊あるか?」
焦った声で河田がたずねる。
「新聞ならあるよ。それがどうした?」
新聞がどうしたというのだろうか。
「見てみろ。おれんち読売だけど、載ってるぞ!」
河田が叫ぶように言った。
何をそんなに興奮しているのだろうか。
電話はそのままにして、わたしは居間から新聞を取ってきた。わたしの家は朝日だった。
「朝日なんだけど」
わたしが言うと、河田は、
「いいから探してみろ。田端で、下平いずみだ!」
そう叫んだ。完全に叫び声になっていた。
尋常ではない電話の向こうの河田の様子と、下平いずみ、という思いもしなかった名前に、猛烈に嫌な予感がした。
「あった……」
わたしはつぶやいた。
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