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この町には禁忌の門が存在する。
高神町の北部にある紫陽花通りの途中にある閉ざされた門だ。
以前は公園があったようだが、今では誰も入れないように厳重に閉ざされていた。
鉄の門扉は重厚でその上かなりの高さがある。門を登って侵入しようと試みる者もいたようだが、鼠返しのようになっているところに鉄条網が張られていた。
もちろん門以外の塀も同じだ。
ここに侵入するすべはないように思われていた。
だが、方法はあった。
別に門の向こう側を知りたいわけじゃないけど行かなきゃいけなくなったのだからしかたがない。
「ねぇ、あの門は絶対に攻略しなきゃね」
「もちろん、何度でも挑戦してやるさ。あそこにはいろんな噂があるからな」
「そうそう、殺人事件の現場だったとかで怨霊が閉じ込めてあるって噂でしょ。他には、あの門を開けると異次元の扉が開いて二度と戻れないなんて噂もあるわよね。まぁどれも胡散臭いんだけど」
「ふん、そんな噂なんかどうでもいい。何が起こるかわからない閉ざされた場所に踏み入れることに喜びを感じちまうんだから」
禁忌の門である紫陽花通りに鎮座する存在感がある閉ざされし門の難題を解こうとする阿呆な兄妹がいた。
毎度、毎度失敗をしてはチャレンジするふたり。
触れてはいけないとわかっているのだが、どこにでも心霊スポットだのパワースポットだのがこの上なく好きだという輩はどこにでもいる。
そんな阿呆が佐田徹とその妹の楓(かえで)だ。本人たちはいたって真面目だと豪語しているのだが周りは呆れている。浮いた存在だ。
またやっているよって感じだ。
やめればいいのに、いつもトラブルを持ち込んでしまうどうしようもない兄妹だ。
その兄妹に今回巻き込まれてしまった可哀相な奴がここにいる新藤昴(すばる)だ。
なんでこうなってしまったのだろう。
あのメールさえ読まなければ徹と楓に関わることはなかったというのに。
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