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『おまえの猫を預かった。返してほしくば、紫陽花通りの禁忌の門へ来い。ひとりでだぞ。
ただし、雨の降っている日じゃなきゃダメだ。
しかも、門の傍に咲く紫陽花が赤紫色であることを確認しろ。
そうでないと、おまえの猫には逢えまい。わかったか。
万が一、条件に合った日に来ないときには愛猫が屍(しかばね)と化すだろう』
昴は必死に近所を探した。白に黒の斑のあるうちの猫パッチはどこにもいなかった。
メールはイタズラじゃないのだろうか。
あの門に行かなくてはパッチが助かる道はないのだろうか。
猫なら、どうにか逃げ出すことができるはず。いや、捕まっていては無理か。
これが夢だったらよかったのに。
梅雨の時期でよかった。
雨は待っていましたとばかりにその日の夕方降り始めた。問題は紫陽花の色だがおそらく問題ないだろう。
下見に行ったとき門の傍の紫陽花はすでに赤紫色だった。
他の場所の紫陽花はピンクや白それに青なのに、なぜか門の傍にある紫陽花だけ赤紫色だった。しかもかなり濃いめの色合いだった。
だからどうしたと言われればそれまでだが。
とにかく急ごうパッチが待っているはずだ。助けを待っているはずだ。
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