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「おい、何している?」
無視だ、無視。
「おい、俺の仲間になったんだぞ。話くらい聞け」
ああ、うるさいな。よしこんものかな。
次は紫陽花だ。赤紫色の濃いものをひとつ選び雨水に入れて一気にグイッと飲み干した。
「おまえ、そんなの美味いのか? 変わった奴だな。まさかそれを飲みに来たわけじゃないよな」
徹はひとりでしゃべっている。楓は不思議そうに小首を傾げていた。
よしあとは扉に手を置いてだな。
「ちょっと待てよ。さっきから無視するな」
腕を取られて徹の方に向きを変えられた。
「わりぃけど、邪魔しないでくれるか」
「なんだって邪魔だって? 昴、おまえはいったい何をしているんだよ。説明くらいしろよ」
「だから、悪いんだけど説明は出来ないんだ。あとちょっとだけでいいから黙っていてくれ」
「ねぇ、兄さんちょっと見ていようよ」
「なんで?」
「わかんないけど、なんかそんな気がする」
「ふん、わかったよ。なら好きにしろ。あと一分だけ見ていてやる」
よし一分あれば十分だ。
気を取りなおして行くぞ。
門扉に両手を置いて、目を閉じる。パッチ今行くぞ。
ゆっくりと門扉を押していく。
あれ、さっきまで手に冷たくて硬い感触があったのにその感触がスッと消え去った。
同時に身体が前のめりになってそのまま前に転がりそうになったところで何かにぶち当たる。
大きな木の幹だった。
ここはどこだ?
紫陽花通りは?
門はどこに消えた?
もちろん、あの二人も姿が見えない。
まるっきり別な場所に来てしまったようだ。
もしかして、成功したってことか。
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