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「ようこそ、猫屋敷へ」
突然の背後からの声にハッとなり飛び上がってしまった。
心臓が止まるかと思った。
「ふふふ、面白いお方だ。けど、驚かせてすみません。こちらへどうぞ」
黒いフードつきマントを着た怪しげな男だった。
深くフードを被っているから顔ははっきりしないが声が男だからそうだろう。
それにしても猫屋敷って言ったよな。
パッチは誘拐されたんだよな。
とにかくこの男に従おう。
しばらく歩いて行くと大きな屋敷が見えてきた。
いかにも幽霊が出てきそうな古い洋館だ。あそこにパッチはいるのか。
「どうぞお入りください」
促されるまま玄関扉を潜る。と同時にバタンと扉が閉ざされた。
えっ、嘘だろう。
まさかとは思うが鍵を閉められたわけじゃないだろうな。
カチャリと確かに音がした。中からはこの扉を開けるすべはなさそうだ。
閉じ込められちまった。
大丈夫だ、きっと。
今はパッチを探さなきゃ。後のことはそれから考えればいい。
「パッチ、おーい。パッチ」
呼んではみたもののパッチの声は聞こえなかった。
どこから探すか。右の扉? 左の扉? それとも二階へ行くか?
昴は思案しつつ右左上と目を向けた。
そのとき、二階から物音がした気がした。
よし二階だ。きっとパッチが合図をくれたんだ。そう思うことにした。
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