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はぁ、なんか薄暗いんだよな。これじゃホラー映画の主人公みたいじゃないか。
突然どこからか殺人鬼でも出てくるんじゃないだろうな。
ギシッとどこかで軋む音がしてビクッと身体を震わせてしまう。
お化けなんて怖くない。
殺人鬼なんていない。
けど、誘拐犯がいるのか。そいつは人殺しじゃないよな。
階段を一段一段上がっていく。
少しだけ二階の様子が窺えるが全貌は見えない。
右と左に分かれているようだ。
なんか心拍数が上がっていく。ゴクリと唾を呑み込み前へと進む。
なんだ汗が噴き出てきた。
階段を上がりきったあたりに絵画が飾られている。
肖像画だろうか。薄暗いせいで輪郭だけがぼんやり見える。
一歩、二歩、三歩。
二階に近づくにつれて絵画に描かれているものがはっきりした。
猫だ、猫の絵だ。けど、人のように椅子に座りじっとこちらを見据えている。そんな感じだ。なんとなく猫の絵の瞳が黄金色に輝いた気がしてブルッと身体を震わせた。
大きく溜め息を漏らして二階へと向かう。
あと三段で二階だというところで背後に何かの気配を感じた気がして振り返る。
シーンと静まり返っていて誰もいやしない。
思い込みで見えないものが見えてしまうことがある。幽霊とはそういうものだ。
怖いと思うから怖いのだ。
そう言い聞かせて再び足を進めた。
再び溜め息を漏らして二階に辿り着く。もう何時間も階段を上がっていたような錯覚に陥っていた。さてと、パッチはどっちにいるのだろう。
右か? 左か?
そのとき突然になにかが弾けたようにバタンと轟いた。
ひぃっ。
肩を竦めてしゃがみ込む。
何をビビッているんだ。たいしたことじゃない。ここの住人がドアでも蹴りつけたに違いない。そうさ、そうに決まっている。
ゆっくりと音の方へ目を向けると、ひとつの部屋の扉が開かれていた。
ほら見ろ思った通りだ。
ここの住人は人を驚かす天才だ。けど、そんなこと勘弁してほしいけどな。
誰かがそこから出てきた。いったい誰だろうと目を凝らす。
その姿は、なんとも信じられないものだった。
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