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「佐伯君、よく来てくれたわね。みんな先に入ってくれているわ。お線香、あげていって。」
佐々木のお母さんは深々と頭を下げて、俺を歓迎した。仏壇には小学六年生の男の子の写真が飾ってある。俺にはそれが誰かわからない。神様に言われたとおり、俺は佐々木を忘れてしまっている。
誰だかわからない男の子に手を合わせて、俺は佐々木家を後にする。これから靖男と、今日線香をあげに来なかったやつらと合流してカラオケだ。休みが終わったら大学が始まる。
S…過去の俺、佐伯彰浩からのメールはすべて消した。送信済みのメールも全て消した。でも、何度消しても、俺が俺に命令したあのメールだけは、なぜだか削除することができなかった。
『突き落とせ』
佐々木を殺すように命令したあのメールだけは、ケータイからも、俺の記憶からも削除することができなかった。
終
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