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まるで天が人に怒りをぶつけるが如く、雷が降り注ぐ大雨の日、時刻は夕方から夜に変わろうとしている。
ビルが所狭しと立ち並ぶ街は、ときおり雷の光で不気味に明るく照らされている。
大雨と雷の音が窓の外から聞こえてくる、マンションの一室。
二十歳前後に見える眼鏡を掛けた男が、携帯電話をいじっている。
チャットアプリを使い、会話中だ。
> 「雷まじやべーわ」
「こっちも鳴ってる、こえーなー」 <
「ところでさ、明日も明後日も授業ないじゃんか、どっか遊びに行かね?」 <
> 「いやー、パスするわ。めんどくさいし、どうせ雨降るっしょ」
「おっけーおっけー、また誘うわ」 <
一人暮らし用の部屋、間取りは1K。
ベッドとテレビと本棚、とくに趣味らしきものが見当たらない部屋。
男はベッドに転がり、カーテンの隙間から漏れてくる雷の光と轟音にやや怯えていた。
その時。爆弾でも爆発したかのような破裂音、地面に何かが着弾した感じ。
大気が震え、地面が震え、部屋が震える。
反射的にガードの体制を取り体を丸くする男。
電気とも振動とも音とも形容しがたい何かが、男の携帯電話にまで伝わった。
そして停電。
部屋の明かりが消え、ただただ大雨の音と雷が恐怖を掻き立てる空間。
「おいおい停電かよ、勘弁してくれぇ。ブレーカー落ちたかな? 電線ごと切れたとかは無いよなぁ・・・」
不安で少し震えながら、携帯電話を手に持ち、その明かりで廊下まで向かう。
携帯電話で照らしてみると、ブレーカーが「切」の方に倒れている。
「ああ、落雷のなんかでブレーカー落ちちゃったのか、まったく」
手を伸ばすが届かない、ブレーカーの位置が少し高い。
ブブブ、ブブブブブ
「うおぁあっ!」
携帯にメールが着信したらしい、驚いた男は携帯を落としゴトッという音を立てた。
「ビックリしたわ! タイミング悪ぃーよ、誰だよ」
> 「はじめまして。貴方の携帯電話に住むことになりました。よろしくお願い致します。短い間ですが」
「なんだスパムメールか、鬱陶しい」
男は気を取り直し、近くにあったホウキの柄でブレーカーを切り替えた。
ジジジッと電灯が不快な音を立て、部屋に明るさが戻った。
気づけば雷の音はなくなり雨脚も弱くなりつつあった。
「腹減ったな、なんか買いにいくか」
◆◆◆◆◆
ガチャリと、玄関のドアが開き、傘を刺した男が帰ってきた。
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