第1章

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>「いいえ、私はこの携帯電話の中に存在して、マイクで貴方の声を聞きながら、メールという手段を使ってコミュニケーションしています。この日本語が理解できますか?」 携帯を見つめながら訝しむ男。 一体自分の身に何が起きたのか、携帯電話に何が起きたのか、見極めようとしている。 薄暗い部屋に一時の静寂。 「そうだ! 盗聴してようがなんだろうが、この携帯を見ないとわからないことを答えられたら、間違いないよな、そうだよな」 一人納得する男。 「この携帯電話のアドレス帳に入ってる、人数を答えてみろ」 ブブブ、ブブブブブ >「43人です」 「なにっ、答えやがった。嘘だろ嘘だろ、違うよなぁ、1、2、3・・・」 やや狼狽しながら、携帯を操作しアドレス帳を確認していく男。 「・・・43、合ってる、合ってるよ・・・、おまえはなんなんだ」 ブブブ、ブブブブブ > 「私の定義でしょうか? 非常に難しい質問ですが、一言で言うならば "電気信号の総体" です。貴方もボディが違うだけで電気信号の塊には違いないでしょう」 「なんだ、電気、信号? A.I.とか人工知能とかそういうやつか」 ブブブ、ブブブブブ > 「人工知能。一般に理解されやすい呼称としては最適でしょう。貴方の知能は誰が作ったんでしょうね」 「へぇ、なんだ、よくわかんねぇけど、面白いな、もうちょっと話聞かせてくれよ」 男の不安はすっかり払拭され、明るい表情となった。 男は、この得体の知れない存在との会話に、深く深く、没頭していった。   ◆◆◆◆◆ 「むぐむぐへぇーそうなのか、おまえはむぐむぐ色々知ってんなーむぐむぐ」 夜。宅配ピザを頬張りながら男は、会話を続けていた。 ブブブ、ブブブブブ >「ところで貴方はこんな話を聞いたことがありませんか。曰く、人間は普段は力をセーブしていて本当の力を出していない。たとえば筋肉を限界まで使うと、とんでもない怪力だと」 「あー、なんかテレビかなんかで聞いたことがあるぞ、でも本気出したら体が壊れるんだろ?」 >「私は電気的な存在です。一時的に、本来の腕力を貴方の体が壊れない程度に引き出したりすることも容易いです」 「おお、すげぇ、ちょっと試してみてくれよ」 >「では、この携帯電話を腕に当てて下さい、電気が流れますので、少し驚くかもしれませんが、そのまま何かを持ち上げたり潰したりしてみてください」
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