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「むぐぐ…っ!」
ぬ、抜け出せない…!
「そういえば名前を聞いていなかったな。せっかく娘になるというのに、名前も知らないというのもおかしな話だなぁ…」
「か、カオル様!」
「大丈夫ですか!?」
「なるほど、カオルと言うのか」
いや、納得してないで離してください。じゃないと私の転生生活がわずか2日という短い期間で終わりを迎えてしまうので。
だがディーヴァンさんは2人の声を聞いていないのか、「ふむ…そうだな」と何やら考えているようで一向に離してくれる気配が見えない。マズい、これは非常にマズい。
なんて思った矢先、
「君達、何をやっているんだい?」
リエクに似た、だがどこか爽やかさを感じさせる声が聞こえたかと思うと、ディーヴァンさんによる今までの抱擁(という名の拘束)があっさりと解かれ、私は思わずその声の主に振り返る。
「? 僕の顔に何か付いているかな?」
「いや、そんなこと無いっす」
「っす? 変わった喋り方をするんだね、ハムラさんって」
「は、はい……」
というかこの男性、顔までリエクに似てイケメン……ハッ、まさか。
すると予想が的中したのか、ディーヴァンさんが「おぉ、ベルクではないか」と親しげに挨拶し、エメリーさんとイエムさんの2人に至っては頭を下げていた。
あ、これ完全にあれだな。この男性がリエクの弟さんってパターンだな。
「ディーヴァンさん、お久しぶりです」
ニコリと笑みを浮かべ、挨拶を返すベルクさん。
「あぁそうだ、ちょうど良かった」
笑顔でそう言うと、何故か私の肩に腕を回して引き寄せるディーヴァンさん。
あ、今日3度目の嫌な予感。
「何か近況報告かな?」
ニコニコしながら訊ねるベルクさんに「そうなるな」と答え、ディーヴァンさんは言葉を続けた。
「今日からカオルを娘にすることにしたんだ。養子だが、これから本物の娘同然に愛情を注ぐつもりだ」
「…………………え?」
あぁ!ダメだ!さっきまでニコニコしていたベルクさんの表情が固まった上に割と本気の「え?」が出ちゃったよ!
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