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ゴホッと吹っ飛ぶ、裕樹を青色の着物少女こと、伊織はヒューッと口笛を吹いた。
「容赦ないねぇ。相手は子供だぜ?」
「どっかの神様が、無謀なことやってるから不可抗力だ。それにあの程度じゃ死なないだろ。あの力は、俺のと似てるからな」
山都を獅子とするなら、裕樹は狼だろう。身体能力を向上させる力なら底なしのタフを誇る。それが野生の力なのだ。
「あとな、お前も危険なことするなよ」
「君が回復できる時間を稼いでいたんじゃないか」
「だからって、裕樹を逆撫でするようなこと言うな」
「そうなっても山都、君が守ってくれるから大丈夫さ」
それとも君は、私を見捨てるのか? と伊織の言葉に山都は、ウムムムと唸った時だった。田奈を抱っこした、クマっ子が言った。
「いちゃついてるところ悪いんだけどさ。まだ、終わりじゃないみたいだよ」
「裕樹の奴は、気絶してるし」
「だ、誰がいちゃついているんだ!!」
プウッと伊織が頬を膨らませて、抗議を打ち消すように瓦礫が吹っ飛んだ。
「ほら、あそこにいる、通り魔が復活したみたいだよ」
裕樹に痛めつけられた通り魔は、ギラギラと瞳を光らせていた。山都は通り魔の容姿を確認していないので、上手く言えないが、彼の頭には犬のような耳が生えて、頬は大きく裂けて引きちぎった、手錠の輪っかがジャラリと響く。
「バカにしやがって、どいつもこいつも俺のこと化け物みたいに見やがって、もう許さねぇ!! ぶち殺す!! 全員、食い殺してやる!!」
「クソッ、あいつも同じ力を持っているのかよ」
腹の傷を抑えながら、山都は舌打ちした。血を流しすぎた。しかし、ここで倒れるわけにはいかない。背後には裕樹、田奈、伊織と、謎のクマっ子。
「山都大聖くん。もしよかったら変わってあげようか? アタシは元気もりもりだぜ?」
「いや、いいよ。アンタは伊織達を見ていてくれ。これは俺の喧嘩なんだ」
「アンタじゃなくて、アタシは月乃汀(ツキノ、ナギさ)って名前があるんだけど、任されたよ」
オッケーと片手を上げる、月乃に山都は苦笑いしながらオウッと片手を上げた。
「呑気に話し込んでんじゃねぇよ!!」
一瞬にして距離を縮めてきた、通り魔に山都は両手をかざすことで防御するが、通り魔は手の中に隠していた、砂を山都めがけて、ふりかけた。突然のことで驚いた。山都の腹の傷に通り魔は拳を叩き込もうとするが
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