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高間裕樹(タカマ、ユウキ)が、その子に出会ったのは梅雨の終わり、七月に入る直前のこだった。小学生のサッカークラブの帰り、突然、降り出した雨にうたれながら急いで帰っている途中、ガサッとゴミ捨て場を通り過ぎようとしたときだった。回収されていない、ゴミ袋に埋もれるように、その子はぐったりと寝ころんでいた。
「なんで、この子、クマの着ぐるみを着てるんだ?」
お腹に大きな月の印が入った、その子はクマのフードを目深に被って素顔は見えない。雨足はドンドン、ヒドくなり、グッショリと濡れたクマの着ぐるみはとても重そうだった。どうして、着ぐるみを着ているかと疑問を隅っこに押しやり、裕樹はクマっ子の肩を揺らした。
「うぅ、お腹、空いた」
雨空、広がるクマっ子こと、少女はデッカい腹の虫を鳴らして、裕樹の身体にしがみついた。雨に濡れたクマっ子に押し倒されそうになりながら裕樹は困ったように、苦笑いした。
七月に入り、ポニーテール少女こと、真朱の屋敷に、大きな荷物を抱えて、同級生が訪ねて来た。本町田奈(ホンマチ、タナ)はムッと不機嫌を隠すことなく、口を無一文字に結んでいた。
「あの本町さん、どうしたんですか?」
玄関で出迎えながら、真朱は聞いた。
「泊めて」
一言、田奈は言う。
「えっと」
「お願い、事情を聞かないで私を泊めて、荷物は持ってきたから」
有無を言わせずに、玄関を上がり込もうとする、田奈に真朱はまぁまぁと彼女を制止した。彼女を泊めるにしろ、泊めないにしろ、この屋敷には、見つかるとマズい連中が居候中だ。
「山都さんや、赤羽さんは居候してるんでしょ? だったら私もいいじゃない」
制止する、真朱を睨みつけて、田奈は言った。そうだけれど、彼らは、ここに泊まる理由があるから居るだけで、ここはホテルではない。
「と、とにかく理由を聞かせてもらいますか」
「いや」
「理由が話せないんじゃ、泊められません」
「嫌よ。いや、なんであんな奴のこと、話さなくちゃいけないのよ」
あんな奴に言われ、背後からぬぅーっと顔を出した赤羽揚羽が顔を出した。
「あんな奴って高間くんのこと?」
ヒャウッと真朱がビックリしたが、揚羽はそっと彼女に耳打ちした。
「(陰火達は、鏡の世界を通って、蛇目お姉さんのところに行ったよ)」
「(そっ、そうですか。ありがとうございます)」
何話してるの? と
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