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うんと、山都は頷く、彼にもそういったことがあった。母子家庭の彼は、母親と一緒にいることが気恥ずかしくて仕方ない時期があった。
「甘えたりすることが恥ずかしくてな。誕生日を一緒に祝おうなんて、そんな子供っぽいとわざと興味ないってフリをするんだ」
納得いかないと、ブーッと頬を膨らませる田奈に山都はどうしたものかと考えるが、女の子の気持ちの察するのはとても苦手だった。
「まぁ、こういうときは、同い年の女の子に相談するのが一番だな」
そうだ、そうだと頷きながら、山都は戸を開けた。わぁと聞き耳をたてていた、揚羽と真朱が倒れる。
「聞き耳なんて行儀が悪いぞ。お前達」
あうっ……ともみくちゃになった、二人を見下ろしながら山都はため息をついた。というわけで、四人で相談。
「一番、気になるのは高間くんの用事ですよね」
最初に口を開いたのは、真朱だった。
「これがわかれば苦労はしないわよ。どうせ、あのバカに聞いてもなんでもねーよって答えるだけよ」
「最近、高間くん、給食、残すこと多くなったと思わない? パンとか、袋にい入れて持って帰ろうとして、先生に怒られた」
と揚羽が言うと、真朱も、
「高間くん、いつも給食、おかわりしてましたよね」
「捨て犬でも拾ったんじゃないか? こっそり餌を与えてるみたいな」
「それはないわよ。だって、ゆう……あのバカ、幼稚園児の頃に犬に噛まれて、それ以来、動物は苦手だったはずだから捨て犬を育てるなんて絶対に無理よ」
話が振り出しに戻り、みんながうーんと唸る。給食が残りを持って帰ろうとして、捨て犬ではない、何か。
「裕樹はサッカークラブに入ってるんだろ。給食をこっそり持って帰って、おやつにでもするつもりじゃなかったのか?」
「ないない。だって、アイツがサッカーの練習のときは、お母さんがお弁当、作って持たせてるもの」
うんうんと、即座に山都の意見を切り捨てていく、田奈。真朱と揚羽はそのことを知っているらしい。
「じゃあなんだってんだよ」
降参だぁと両腕を振り上げた、山都の背後にスルリと一人の少女が蛇のように巻きつき、
「それって、恋なんじゃないのぉ?」
クスクスと耳元で囁いた。
「日傘、お前、いつからそこにいた?」
「フフフ、蛇目日傘(ジャモク、ヒガサ)はどこにだって現れるんだよぉ?」
クスクスと山都の背中に抱きつきながら蛇目は言った。
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