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プイッとそっぽをむく、日傘。どうやら彼女は、自分の家を避難所に使われたことを拗ねているらしかった。
「お前な」
「山都様、早く探しに行きましょう」
「わかった。けど、真朱は陰火や鏡子と一緒に探せ。不審な奴を見つけても不用意に近づくなよ」
「は、はい」
「チッ、嫌な予感がするっ!!」
一方、その頃、高間裕樹は、熊の着ぐるみを着た少女と出会っていた。数日前、ゴミ捨て場に倒れていた彼女を裕樹はコッソリ、匿っていた。
「すまないね。迷惑かけて」
クマのフードを目深に被り、彼女はコンビニ袋から取り出した、おにぎりをモシャモシャと食べていた。
「気にするなよ。お姉ちゃん。右足、怪我してるんだしさ。でも、本当に病院に行かないでいいのか?」
「フフフ。こんなクマっ子が病院に現れたら、騒ぎになってしまうぜ?」
「じゃあ、その着ぐるみ、脱いだらいいんじゃない?」
ともっともな意見を言うが、クマっ子はチッチッチッと人差し指を立てて、左右に揺らした。
「いいかい? 人の皮膚を剥げないように、アタシだってクマの着ぐるみを脱いだら死んじゃうのさ。太陽を浴びた吸血鬼みたいにね」
ポンポンと右足を叩く、彼女がニヤリと笑った。もしかしたら右足を怪我してしているというのも嘘かもしれない。
「また、そうやってはぐらかす」
「まぁまぁ。気にするなよ」
ポンポンとクマっ子は裕樹の頭を撫でながら、彼が持ってきてくれた新聞を取った。
「でも、アタシに会いにくるのは控えるべきだね。最近は物騒だ」
彼女が見ていた、新聞記事は連続通り魔、脱走の記事だった。
「だったら、お姉ちゃんはどうするんだよ。怪我してるんだろ?」
「その気遣いは嬉しいが」
「幼なじみの女の子とお母さんの誕生日のお祝いをするんじゃなかったのかな」
「いいんだよ。そんなこと、どうせ、俺なんて居なくても、山都の兄ちゃんとか呼ぶんだからさ」
ケッと舌打ちする、裕樹。
「フフフ。嫉妬かい? いいねぇ。青春というやつだ」
「違うって、まぁ、あいつら山都の兄ちゃんのことばっかり話してるけどさ」
「異性の男の子で夢中になるのはいいんじゃないかな」
「高校生の兄ちゃんだぞ。相手になんてされるわけがない」
「むしろ、年頃の女の子なら、かっこいいお兄ちゃんに夢中になるものさ。で、一つ、聞きたいことがあるんだけど。その山都の兄ちゃんってどんな人?」
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