第1章

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ハァハァと田奈は走っていた。背後からチャラチャラと手錠の鎖が鳴り響き、恐怖が背中を押す。止まったら殺される。さっきの一撃は、偶然、かわせたが今度、追いつかれたら逃げ切れる自信はなかった。 「なぁ? 嬢ちゃんよぉ。どこかに行くつもりだったんだろう? 俺が案内してやるよぉ!!」 ドンッと目の前に、通り魔の男が着地した。 「三途の川までなぁ!!」 「いやっ!! 助けてっ!!」  「はぁ。いいねぇ。やっぱり殺すとするなら嬢ちゃんみたいなガキにかぎるぜ。ぴーぴーっ!?」 殺されると、田奈が身構えたとき、通り魔の叫び声が響き渡った。田奈は、そっと目を見開くと、そこには銀髪の少年が通り魔の顔面を掴み上げていた。バタバタと手足を振り回しながら暴れる、通り魔を銀髪の少年は、睨みつけ、  「オマエか。タナを傷つけたのは……」 ガンッと地面に叩きつけた。通り魔の鼻が潰れ鼻血が吹き出し、前歯がへし折れ、 「あがっ!? アガッッッッツツツツ!!!!」 銀髪の少年が通り魔を蹴り飛ばす。ドンッとサッカーボールのようにバウンドする通り魔よりも速く、先回りした少年が片足を振り落とした。ドシャッと地面が割れて、通り魔が地面に叩き込まれる。 「ゆ、裕樹……」 田奈は叫んだ。 「やめてよ。裕樹、それ以上、殴ったりしたら死んじゃうわ!! 裕樹!!」 けれど、彼女の言葉は彼には届かない。どうしよう、どうしよう、どうしよう、裕樹が人殺しになってしまう。 「お願い、誰か助けてよ。裕樹を、助けてよ!!」 助けてほしいと思った。誰か、どうにかしてほしいと願った。身勝手な願いかもしれない。それでも、田奈は言う。 「私は、どうなったっていい。裕樹を助けて!! 裕樹を人殺しにしないで!!」 彼は助けたかっただけだ。ただ、人外の力を得てしまっただけだ。 「自分がどうなってもいいなんて、悲しいこと言うなよ。田奈」 必死の懇願は、届く。赤色の衣に身を包み、金髪の髪をした少年が降り立った。優しい声、聞き覚えのにある声。 「山都さんなの?」 「事情はあとでな。アイツを止めないといけない」 「待って、山都さん。アイツは、裕樹なのだから」 と言いかけたとき、背後に熊の着ぐるみを着た少女が田奈の首筋を打った。うっと倒れ込む、田奈を受け止めた。 「お前は?」 「そういうこと今、気にしてる場合じゃないでしょ。山都大聖くん。手遅れになるよ」
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