3人が本棚に入れています
本棚に追加
ハァハァと田奈は走っていた。背後からチャラチャラと手錠の鎖が鳴り響き、恐怖が背中を押す。止まったら殺される。さっきの一撃は、偶然、かわせたが今度、追いつかれたら逃げ切れる自信はなかった。
「なぁ? 嬢ちゃんよぉ。どこかに行くつもりだったんだろう? 俺が案内してやるよぉ!!」
ドンッと目の前に、通り魔の男が着地した。
「三途の川までなぁ!!」
「いやっ!! 助けてっ!!」
「はぁ。いいねぇ。やっぱり殺すとするなら嬢ちゃんみたいなガキにかぎるぜ。ぴーぴーっ!?」
殺されると、田奈が身構えたとき、通り魔の叫び声が響き渡った。田奈は、そっと目を見開くと、そこには銀髪の少年が通り魔の顔面を掴み上げていた。バタバタと手足を振り回しながら暴れる、通り魔を銀髪の少年は、睨みつけ、
「オマエか。タナを傷つけたのは……」
ガンッと地面に叩きつけた。通り魔の鼻が潰れ鼻血が吹き出し、前歯がへし折れ、
「あがっ!? アガッッッッツツツツ!!!!」
銀髪の少年が通り魔を蹴り飛ばす。ドンッとサッカーボールのようにバウンドする通り魔よりも速く、先回りした少年が片足を振り落とした。ドシャッと地面が割れて、通り魔が地面に叩き込まれる。
「ゆ、裕樹……」
田奈は叫んだ。
「やめてよ。裕樹、それ以上、殴ったりしたら死んじゃうわ!! 裕樹!!」
けれど、彼女の言葉は彼には届かない。どうしよう、どうしよう、どうしよう、裕樹が人殺しになってしまう。
「お願い、誰か助けてよ。裕樹を、助けてよ!!」
助けてほしいと思った。誰か、どうにかしてほしいと願った。身勝手な願いかもしれない。それでも、田奈は言う。
「私は、どうなったっていい。裕樹を助けて!! 裕樹を人殺しにしないで!!」
彼は助けたかっただけだ。ただ、人外の力を得てしまっただけだ。
「自分がどうなってもいいなんて、悲しいこと言うなよ。田奈」
必死の懇願は、届く。赤色の衣に身を包み、金髪の髪をした少年が降り立った。優しい声、聞き覚えのにある声。
「山都さんなの?」
「事情はあとでな。アイツを止めないといけない」
「待って、山都さん。アイツは、裕樹なのだから」
と言いかけたとき、背後に熊の着ぐるみを着た少女が田奈の首筋を打った。うっと倒れ込む、田奈を受け止めた。
「お前は?」
「そういうこと今、気にしてる場合じゃないでしょ。山都大聖くん。手遅れになるよ」
最初のコメントを投稿しよう!