第1章

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        集中戦/2 FBI本部特別室 日本時間午前8時48分 FBI本部の特設会議室では、7人の専門捜査官が集まりアレックスの指示の元、それぞれの仕事に従事していた。日本語通訳官、電磁機器専門官、各組織(コール、統合作戦本部、NSA)対応分析官、主任分析官、爆発物専門官たちだ。 『またどこか爆発したけどええん?』と飛鳥の声がスピーカーから聞こえた。電話は双方スピーカーになっている。 「こちらで調整します。少しお待ちください」と通訳官が日本語で伝える。  アレックスは各捜査官たちのほうを見た。全員で周波数の調整を続けている。  飛鳥たちが持っていた携帯電話が、非常用とはいえクロベ・ファミリーの携帯電話だった事が幸いした。クロベ・ファミリーに携帯電話は全て衛星電話なので、紫ノ上島の電磁機器制御施設と携帯電話を介する事でFBI本部での遠隔操作が可能になった。これが操作の効率を格段に上げた。さすがの飛鳥や宮村でも、見たことも触った事もない電磁気制御機を使って爆弾を無効化することような専門的な事はできない。  地下7Fの通信式爆弾はドイツ製の軍用品で、一年前にハミルトン社がドイツの武器メーカーから大量購入していたもので、先日からすでにFBI本部に設置された特別チームがその事を調べてあげていた。通信コードはすでに入手しデーターとしてサーバーにアップされているので、強い電磁波により通信霍乱させる方法より、プログラムを組み替えた偽の通信コードを送り、再設定することで無効化したほうが確実だと判断された。  ただ予想外に島の電磁波制御装置の精度が悪く、地下7F全部の爆弾のコードを書き換えるのには、想定していたより強い電磁波を出す必要があった。そのため、紫条家や他の地下エリアにセットされた<ボンバー・システム>爆弾が誘爆する事態になったのだ。もっとも、それはアレックスも飛鳥たちも予期していた事だ。  爆発物専門官のロニー=サーフィスは、これまでの敵組織の装備情報やハミルトン社関係のデーターを睨んでいた。 「おそらく地下7Fの爆弾は全て同じものを使用していると思います。ハミルトン社のデーターの裏づけがあることもそうですが」
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