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「あっ、いいえ!ぃえ、なにも。そか、そうです・・・か」
「でも」
「はい?」
「加瀬君とキスした事と、『かおりん、俺以外の人にはキスしないでくださいね』って言われた事はハッキリ覚えてるよ」
「っっ!!!」
にっこり微笑ってそう答えた直後、
加瀬君の顔が一気に耳まで赤くなった。
そのままフリーズしている彼に、
さらに追い打ちをかけるように言う。
「でも思ったんだけど。加瀬君は私に、自分以外の人とはキスするなって言いながら、加瀬君は私以外の奥さんともキスするんでしょ。それって不公平だと思わない?」
「え、あ、いやっ、それは」
「・・・なんてね。加瀬君カッコイイから、意地悪言ってみただけ」
「っっっ」
恋愛はこういうビミョーな駆け引きが楽しい。
すぐ横に加瀬君の端正な顔がある。
琥珀色の目がキラキラしていてとてもキレイ。
その目を見ながら、
ふともう1人の琥珀色の目を思い出す。
まるで別次元の圧倒的なその存在感。
でも一瞬後にはすぐに消えた。
「ねぇ。加瀬君の奥さんってどんな人?美人?」
「えっ、フツーですよ、全然普通っ。藤木さんみたいにキレイじゃない、し」
「かおりんって呼んで」
「・・・か、おりん」
「加瀬君の奥さん、見てみたいなぁ。写メ持ってる?」
「・・・ぃや、あの」
「見・せ・て」
にっこり微笑んでお願いしてみる。
渋々、上着のポケットからスマホを取り出して、
保存していたらしい写真のうちの1枚を見せてくれた。
どこかのカフェで撮られたらしい写真。
そこに、
カジュアルな服装でにっこり笑うショートカットの女性が写っていた。
すごく可愛いでもなくブサイクでもなく、
ごくごく普通の、
本当にごく普通の女性。
なんだか意外。
ホント、意外。
「可愛らしい優しそうな人だね」
「・・・そう、ですかね」
「うん、そう思った。見せてくれてどうもありがとう」
「・・・いえ」
感想を伝えながらスマホを返すと、
ぎこちなくそんな返事。
加瀬君はこの女性のなにに惹かれたのだろう。
いつプロポーズしたのだろう。
もう一緒に暮らしているのかなぁ。
聞きたいことはたくさんあるけれど、
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