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夜になっても目がしょぼしょぼして、酷い頭痛がしていた。
何も食べる気にはなれず、缶ビールだけ飲んで、ベッドに転がった。
『そっか。そらそうやんな……』
明方に彼女の夢を見て飛び起きた。
どうやら昨夜はあのまま眠ってしまったらしい。
頭痛はさらに酷くなっていた。
シャワーを浴びて出勤する。
いつも通りに仕事を熟し、帰宅する。
一人でご飯を食べて、風呂に入って寝る。
ほんの数年前なら当たり前だった日常に戻った。
……筈だった。
でも、何かが足りなくて、どこか不自然で、僕の心はすっかりがらんどうになっていた。
咲き誇る花の目映さも、囀る鳥たちの声も、心地の良い風の音も、夜を密かに照らす月の美しさも、靄がかかったようにぼやけたものになった。
僕の人生を彩っていたものが、灰色に変わっていく。
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