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このまま干乾びて、朽ち果てていくのを待つだけの人生に逆戻りしたのだろうか。
憂悶と絶望の中、必死で日常にしがみついていた。
流れていく時間に心がついていけなくて、たたぼんやりと季節が移ろうのを眺めていた。
半分眠っているような僕の目を覚ます封書が届いたのは、年が明けた一月下旬のことだった。
『安西貴一様』
会社に届いた、見覚えのある字で宛名が書かれた封書。
差出人は『中瀬充・南晴奈』で、中身は結婚式の招待状だった。
「南さんはホンマにええ人つかまえたよなぁ。南さんの彼氏ってめっちゃ良い人やもんなぁ」
「……そうやな」
「ん? 安西さん知ってましたっけ?」
桐谷は僕の返事に首を傾げていたが、僕は何も言わずにその場を後にした。
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