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それからいくつの朝と夜が通り過ぎていっただろうか。
あっという間に新年度を迎え、仕事に追われれているうちに、暦は五月になっていた。
バタバタと慌ただしく過ぎていく日々に安堵していた僕は、東京での全国会議の時、彼女に声をかけられて寿命の縮む思いがした。
「あ、あの……」
「……どうしました?」
言葉を交わすのはあれ以来だった。
彼女も伏し目がちで、気まずそうにしていた。
「懇親会の後、少しだけ時間作ってもらえませんか」
「何かあったんですか?」
「お話したいことがあって……」
「……分かりました」
今さら話だなんて、きっと結婚式には来ないでほしいということだろうと察し、彼女の誘いを受けることにした。
「ほんなら後で……」
わざわざホテルまで呼び出さなくても、今言ってくれればいいのに。
そう思いながらも、懇親会が終わるや否や僕は彼女の元へと急いでいた。
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