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「わたしは一生忘れへんから。安西に恋したこと」
それが最後の言葉だった。
僕は彼女から離れると、来た道を戻って行った。
『愛』という言葉は家族や友達にも使う言葉だが、『恋』という言葉は好きな人にしか使わない。だから、僕は愛より恋の方が価値があると思っていた。
その話を彼女にしたことはなかった筈だが、彼女が最後に僕への気持ちを恋だと言ってくれたことは、大きな意味を持つものだった。
僕たちは恋をしている。
きっとそれは、これから先も変わらないのだと思う。
無聊な日常の中で愛情が少しずつただの情に変わっていくのを感じるぐらいなら、例え一緒にはいられなくても、ずっと恋をしていられる方がいい。
強がりでも負け惜しみでもなく、そう思う。
脳内を独占することこそが、ずっと追い求めてきた理想なのだから。
傍にいることだけがすべてじゃない。
離れていても恋い慕うことはできる。
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