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(はー……だから女性って怖いよねぇ)
いや、すべからず全ての女性がそうと言う訳ではない。勿論男性だって同じ事が言えるが、この時ばかりは出来るだけ自分の勘が当たって欲しくないと思ってしまう。
取り敢えず寝たふりを決め込んでちらりと対面に座る女性2人組を見ていれば、やはりと言うか何か企んでいる。
出来れば俺の中で女性像をこれ以上壊さないでほしい。ただでさえ最近加害者が女性の事件ばかり扱っているんだから。
そうこう考えている内に女性の1人がぼんやりと立っている老人に席を進め、言われるままに座った老人が程なくして舟をこぎ出した時、もう1人の女性が周りから壁になるようにすっと前に立つ。
(……もー……)
溜息を零さず、あくまで事務的に体が動き、バックに常備していた小型カメラと録音用のレコーダーを取り出す。
おそらく彼女達はこれから先の悪巧みに夢中になっていて、足元までは気が付かないだろう。
電車の揺れに生じて録音ボタンを押したレコーダーを床から滑らせ、腕を組む姿勢を保ちながらカメラを回す。
『ばれないって』
『じゃあ次の駅の前でやるね』
後でテープを確認した音声と、その時想像していた会話はそれ程違いがなかったが、駅に到着する前に少し大きく傾く瞬間が犯行に及ぶタイミングなのはわかっていた。
ブレーキがかかり車体が揺れる。それから少し遅れて発せられる声。
「痴漢よ!離して!!」
(あー……)
言ってしまった。
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