犬も歩けば猫に当たる2

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そこまでやるのか。目的は何だろうか。 これだから痴漢の冤罪と本当の痴漢の見分けを判断するのが難しくなるし、検事としても弁護士としても扱いにくくなると言うのに。 動機は単純に示談金目当てだろうが、そんなはした金のために自ら犯罪に手を染めるのもどうなんだろうか。 つらつらと考えながらも、見てしまったからにはどうしようもない。 案の定老人が何事かと首を傾げているも、女性達は「私見てました」だの「駅員に言うから」などと囃し立てている。 「どうしたの?何か問題?」 駅に着き、意味がわかっていない老人を逃がすまいと引っ張って行こうとする2人組と、何だ何だと囃し立て始める乗客に俺。こらそこ、誰が勝手に動画を取っていいと言った? 「な、何ですか?」 きつくこちらを睨もうとして俺の顔を見て、語尾を弱めたのもわかるよ。俺、自分でもちゃんと自覚してるけど、君達みたいなタイプの女性でもうける顔してるからね。 「この人痴漢なんです!」 今度はこちらにすがるように発せられる声。成程、俺は正義感の強い人間と取られて、かつ彼女達の弁護をするように見えているようだ。 まぁ確かに一般的に考えてそれが男性の取る態度であるし、俺も平時であればそうしていた。 だけど、立場が違う者に対してまで博愛主義をかざすつもりはない。
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