犬も歩けば猫に当たる3

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(不思議な人だよなぁ) だけどあんな祖父がいたとしたら面白いかもしれない。 孫娘とやらは幸せだなと思いながら門をくぐり、玄関へ続く道を通っていると、道の脇に植えられている植え込みが何やらがさがさと煩い。 (猫か何か?) でもいたとしたらますます和風なイメージにぴったりかもしれない。 三毛猫みたいな、日本の猫と言われているものが住み着いているのが日本家屋であるという変な先入観も手伝ってか、茂みの中が気になって近づけば、こちらの気配を察したのか茂みが大きく揺れ、中から影が1つ飛び出してくる。 「……」 (女の子……?) 猫のようなポーズをして探し物をしていた女の子の手には、小さなサイコロがあったが、手の中の獲物よりも新しく現れた俺という獲物に興味移ったのか、大きな目がじっと俺を見つめている。 「……ぁ……」 咄嗟に声が出た。 しなやかで発展途上の体躯に似つかわしくない、成熟した夜を髣髴とさせる闇色の瞳。 まるでネオンまでも閉じ込めているようにきらきらと光り輝いているものなのに、一枚薄くて透明なガラスのようなものを纏わせ、さながら万華鏡の中に全てを閉じ込めているかのようで。 名人の瞳も印象深くて、だから気になってこんなところまで来たと言うのに、名人の印象を吹き飛ばすどころか俺の心を一気に持って行く程印象的な瞳が目の前に現れる。
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