犬も歩けば猫に当たる3

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綺麗だ、素直にそう思った。 今まで目の色の違う人達とはたくさん出会ってきたし、勿論日本人の瞳も見慣れている。 感情を表情と同じ位顕著に表す瞳には、目の前の珍客を物珍しそうに見る他には何の感情も映らない。 いつも俺に向けられてきた、好奇に混じる羨望や嫉妬や興味、それと粘度の濃い恋愛の気持ちなど、一切映っていなかった。 夜露に濡れたような黒い髪は肩に軽く触れる位で、風に攫われてふわりと揺れる。 「……っ」 黒猫のようだ。いや、見た目は黒猫かもしれないが、彼女はこの家の守り神(猫神)かもしれない。 「蛍(けい)ちゃーん、見つかった?」 「……探させる位なら最初から投げんな」 ふいっと視線を外されたと思えば、目の前の印象的な子は開け放たれている縁側に注がれている。 少し冷たいが耳触りのいい声が風に溶けて消え、つられるように見れば、そこにはあの時あった男性が目を丸くしてこちらを見てる。 「あんた……」 「……」 沈黙から始まるつもりはなかった。 いつものように当たり障りのない笑顔を1つして、名前を名乗って、それからここに来た経緯を話して。最後に「驚きました?」と言えばこの一連のいたずらは成功だった。はずなのに。 目が離せなかった。
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