犬も歩けば猫に当たる3

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「……」 「がはは、誰もがお前みたいにやりたい事だけやって成功するって訳じゃねえって……よ!」 「っ!」 彼女が言葉を詰まらせたのに消されるように息を呑んだ。 他の人は俺が楽に人生を渡ってきたように見えると言う。 彼女は俺を生きにくそうと言った。 どちらも正解かもしれない。 努力はしてきた。それを人に見せるのが嫌だったし、見せなかった。だから楽に渡って来たように見られるし、そう見られるようにしてきた。 だけど、見られるようにするために、手放したものもあった。 凡人があがいて勝ち取った『秀才』という地位を持つ俺が持てるものなんて、限られている。 だけど彼女は違うらしい。 俺が彼女に興味を持ったのが名人に伝わったのか、長い1局の暇つぶしにと教えてくれる。 白臣 蛍(しらおみ けい)、最年少でプロになり、今年の昇段試験も順当に昇段し今は三段。 幼い頃から囲碁とだけ向き合い、一心にそれだけを愛した。その結果、11歳にも満たない年齢でプロになり、ほぼ負けなし。 女流戦では決勝まで行った事もあり、今年は7大タイトル戦に挑戦できるのではないかと囁かれている。 彼女を知る他の囲碁棋士は嫉妬と羨望、色んな感情を込めて彼女をこう呼ぶ。 ”天才”と。
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